高気密住宅には不可欠の24時間全館機械換気

まず、人間が健康に生きてゆくためには、どれだけの新鮮空気が必要かということです。
この基準は国によってまちまちですが、一時間に30立方メートルというのが一般的です。これは、約8帖の部屋一杯分。4人家族だと32帖、つまり16坪あればいいという勘定。32坪の家だと、2時間で1回全部の空気が入れ替われば、朝から晩まで家族が家で遊んでいても安心というわけ。

しかし、これはあくまでもたばこを吸わない人の場合であって、アメリカでは喫煙者の場合は1時間に70立方メートル、20帖分の空気が必要だと言っています。
例えば3人家族で3人とも喫煙者であれば、30坪の家だと1時間に1回は空気が入れ替わっていなければならないという勘定。

昔のアルミサッシを使っていない家では、風さえあれば1時間に2〜5回も空気が入れ替わっていました。しかし、アルミサッシが普及してからは、スースーの家でも1回転程度。そして、風のない日はほとんど動かず、新鮮空気不足になります。
それだけではありません。石油ストーブやガスストーブは、人間並に新鮮空気を消費します。狭い6帖の部屋で、風のない日にストーブを付け放しにしてたばこを吸ったりしていると、危険な状態になります。

換気を風任せで多すぎたり少なすぎたりせず、隙間を出来るだけ無くして「必要な量の新鮮空気を24時間、計画的に取り込もう」と言うのが高気密住宅の機械換気の考え方。一日たった30円の費用で計画的に新鮮空気が供給され、しかも汚染された空気が排除されるわけですから、理にかなった考えです。

換気量が少なければ少ないほど省エネ性能が高いが…

1人の人間が1時間に必要とする新鮮空気は30立方メートル。給気量は4人家族だと120立方メートルでよい勘定です。
仮に60坪の大きな家で4人家族だったとします。この家の容積、つまり空気の総量は約480立方メートル。必要量は120立方ですから、4時間に1回、つまり1時間に25%の空気が入れ替われば良いという勘定になります。

しかし一方では、必要排気量を計算しなければなりません。
例えば便所は20立方メートル。2カ所あれば40立方。IHヒーターの台所は最低30立方。2階にミニキッチンがあったにしても両方で50立方で十分。それと浴室。床暖房をしていると30立方でよいのですが、ないと50立方は必要。それと、ご主人の喫煙は書斎に限ってもらうことにして、書斎の換気は30立方プラス空気清浄器。さらに、玄関脇にシューズルームを設けたとしますと、この排気も最低20立方は必要。
そこで、排気の必要量を合計しますと170立方メートルとなります。
つまり、家の中に汚れた空気を滞留させず、悪臭を追放するには120立方メートルの必要量よりも多くする必要があります。

そこで、R-2000住宅の技術基準では「標準的な家では1時間に0.5回転、大きな家だと0.3回転という基準を決めました。これは、大変理にかなった考えで、今でも高気密住宅の換気量の基本とされています。R-2000住宅の認定制度はなくなりましたが、R-2000住宅のポリシーと基準は、今でも良心的な業者のバイブルとして継承されています。

そして、カナダでは、ホルムアルデヒドなど揮発性有機化合物の少ない住宅の場合は、0.3回ではなく、おまけして0.2回とか0.25回で良いのではないかと言い始めています。
空気の入れ替える回数が少なければ少ないほど、暖房費や冷房費が少なくて済みます。

つまり「最小の空気の入れ替えで、健康上まったく問題のない高気密高断熱化こそが、もっとも理想的な省エネ住宅だ」ということになります。

いずれにしても、隙間のない家でないと、計画換気を行うことが出来ません。

当社が選んだ各室給気セントラル排気システム  (付)換気の清掃

高気密住宅の換気システムとして、現在日本で使われている代表的なシステムには、以下の4つがあります。
(1) 各室給気・セントラル排気システム
(2) セントラル全パッコン熱交換型で、浴室・便所など部分給排システム
(3) セントラル顕熱交換型システム
(4) 除加湿機能付きセントラル顕熱交換型システム

この中で、もっともポピュラーなのが、第三種換気と呼ばれている(1)の各室パッコン給気・セントラル排気システムです。
 このシステムの最大の特徴は、シンプルで故障が少なく、お施主様のメンテナンスが容易で、とくに北欧では最大の実績を誇っています。
このシステムは、各室に給気口を設けていて、外気が直接部屋の中に入ってきます。このため、給気口の直下にパネルラジエーターか蓄電式のラジエーターがないと、冷気が床に落ちる「コールドドラフト現象」が起こり、著しく快適性が失われます。
つまり、パッコン給気・セントラル排気システムはパネルラジエーター暖房とセットになって、はじめてその優れた効果を発揮します。


[開口部の上に付いているパッコン給気口と暖房用ラジエーター]

ご案内のように、空調換気メーカーの製品の保証期間は1年間です。部分的に室外機などで5年保証の部品もありますが、原則は1年間。
これに対して、当社は空調換気システムまでを含めて10年間の保証をしております。この10年保証を貫徹するためには、故障が多かったり、メンテナンスが難しいシステムは、対象外とせざるを得ません。

確かに(4)除加湿機能付きの顕熱型セントラルシステムなどは、これから注目されてくると思います。また、燃料電池発電に伴う新しい暖房や除湿システムの開発も、これから急速に進むことは間違いありません。
しかし、現時点ではまだまだ完成度が低く、当社の責任で10年保証するというわけにはゆきません。
とは言え、当社は新製品にトライする意欲は、誰にも負けないと自負いたしております。お施主様が10年保証にこだわらないと言うことであれば、今までもご了解のもとに挑戦してきましたし、今後も挑み続けます。



換気装置の掃除について、詳しくご説明します
クリーンで静かで匂いもない理想的な輻射暖房

暖房で、もっとも優れているのがパネルラジエーターによる輻射暖房です。
床暖房が、一番優れた暖房だと考えている人がいます。
今までのように、スカスカの家で、床と天井の温度差が5℃も10℃もあるという住宅だと、たしかに「頭寒足熱」で、床暖房が効果がありました。
しかし、床と天井の温度差のない高気密高断熱住宅では、天井の空気が20℃だと床フロアーも20℃です。床を温めなければならない理由が一つもありません。むしろ、一番寒いのは床ではなく熱貫流率の大きいサッシ際です。そこにパネルラジエーターがあるのですから、部屋のどこをとっても一番温度ムラがありません。

北海道では、20年前に床暖房がブームを呼びました。しかし、住宅の高気密高断熱化が進んで、急速に床暖房がすたれました。
 (1)簡単に暖かくなってくれない。
 (2)温度調節が容易でない。
 (3)2階に簡単に使えない、ためでした。
しかし、それよりもクリーンで、静かで、匂いのないパネルラジエーターの魅力に多くの消費者が魅せられたからです。
世界的にみて、寒冷地の住宅暖房は温水によるパネルラジエーター方式に変わりつつあります。
一時、深夜電力を利用した蓄暖方式が注目を集めましたが、快適性がいまいちのためにすたれ気味です。
そして、当社ではパネルラジエーターの熱源を従来の灯油から深夜電力へ変えるという試みを昨年来採用してきています。これは、
 (1)灯油のボイラーがよくトラブルが起こるし、耐用年数が限られている。
    このため、10年保証をしている当社の場合は、施主の方ともども困る場合が多い。
 (2)エコキュートとは別に深夜電力を利用した給湯方式が開発され、イニシアルコストは高いが、
    10年程度で償却出来る可能性が高い。
 (3)灯油の価格が急騰傾向にあるし、補給の手間がかかる。
などによるものです。


[パネルラジエーター用の深夜電力給湯器]

なお、今年から家庭用燃料電池も登場してきています。
現在のところ設備原価はベンツ並で1000万円と言われています。そして発電量の2倍の発熱があるため、発電よりも給湯面から1KWに限定されています。しかし、当社ではオール電化住宅を強力に推進する一方で、燃料電池の新しい動きの研究も怠りません。


[玄関脇の意匠を兼ねたラジエーター]


浴室床暖房の多彩なメリット

R-2000住宅の最大の功績は、浴室から24時間換気を義務づけたことにより、浴室の天井と壁に生えていたカビがなくなったということです。
浴室の天井や壁に付着したシャンプーの散霧は、カビにとって最大の好餌。そして、そのカビを好餌としてダニが発生しました。これが家庭での最大のアレルゲンの食物連鎖。
ところが、入浴後に壁のシャンプーをシャワーで洗い落としさえすれば24時間換気でカビが発生出来なくなりました。
そして、浴室で唯一カビが発生し、生存出来たのは床と排水溝。それと排水溝の水切りスノコの裏。
これを、換気だけで処理しようとしても無理。排気量を50立方メートルに上げても床はなかなか乾かず、逆に洗い場で身体を洗っていると風を感じて不快。最後に浴室を出る者がタオルで床を拭くか、高熱で乾かすしか方法がありませんでした。

この難問に対して、最高の解決策を用意したのが浴室の床暖房。24時間換気と床暖房で、一番カビの発生率の高い浴室の床が乾燥し、カビを完全に追放したのです。これは自慢出来る快挙。


[カビを追放した24時間換気と床暖房の清潔さ]

カビよりも、もっと大きいのは浴室での死亡事故の追放。
世の中では、交通事故が大問題になっています。年間9100人ほど死亡しているのですから、確かに大問題。
しかし、年間浴室で死亡する人が、なんと交通事故死の1.6倍に当たる1万5000人近くに達しているのです。

人口10万人当りの浴室での死亡者数と浴室の床暖房の普及率を比較した数字があります。 

浴室床暖房の普及率
死亡者数
日 本
5%
10人
韓 国
49
5
スウエーデン
89
0.5

この事実を、もっと多くの日本人は知る必要があります。

夏期の遮熱ガラスの大きな効果と補助的なクーラー

10年くらい前までは「冬暖かい家は、夏も涼しい」と言われてきました。
しかし、寒冷地型の住宅は、必ずしも夏涼しくなく、むしろ「残暑の季節は耐えられない」という生活者の声が聞かれました。
太陽が高い真夏は、直射日光がそれほど差込まず問題ないのですが、陽が傾いてくる夏の終わりから初秋にかけては、クーラーをフル稼動させないと生活出来ないというのが実態でした。

こうした実体験に基づいて、当社は全部のガラスを遮熱ガラスに替え、太陽熱の60%をカットし、紫外線にいたっては82%をカットしてきています。
このため、残暑を含めて非常に過ごしやすくなりました。そして、夜はほとんど外部から熱気が侵入するということはありません。しかし、人体や家電などから内部発熱します。このため、各室にクーラーを付けています。
出来るだけ、除湿を主体に運転していただければと考えています。


[各室に付いているクーラー]
IHヒーターのほぼ全面的な採用

台所で大きく変ってきているのがIHヒーターの採用です。お湯が沸く時間も早いし、熱の損失が少なく、ほとんどの料理づくりに問題がないということが実感され、急速に普及しています。

そして、何よりも掃除が楽だということと、万が一の安全性が高いと言う点が、とくに高齢者の方から評価されています。
このIHヒーターの普及によって、燃焼ガスの問題がなくなり、換気扇の強運転は不要になりました。ほとんど、弱運転で十分です。匂いは強運転しても解消しません。24時間換気に任せましょう。


[台所を大きく変えたIHヒーター]